郡山市逢瀬町にある「清水池公園」は、静かな住宅街の一角にあるこぢんまりとした公園です。園内に遊具などはなく、緑に囲まれていてベンチの数も多いので、日陰でのんびりするのが好きな大人向けの公園、といった佇まいをしています。
個人的にはお気に入りの公園の1つですが、実はここが「郡山市の水道発祥の地」と伝えられている場所だと知り、さっそくじっくり散策してきました。
池だけど水が湧く泉「清水池」
公園を訪れて一番に目に入るのが「清水池」と名付けられた池です。水によどみはなく、水底まですっきりと見通すことができるので、涼し気な雰囲気があります。流れる水に手をつけてみると、その冷たさに驚きました。
この池は、底から水が湧き出ているそうで、その水は飲料水や工業用水として、明治23年から22年間にわたり使用されていた歴史があります。
現在でもプール3杯分ほどの湧水量があるそうですが、飲用することはできないようで、こんこんと湧き出た水は農業用水などに利用されています。
明治の郡山市を潤した多田野水道
自然豊かな郡山市ですが、昔は市街地の水不足に悩まされていました。
その解決策の一環として整備されたのが、清水池を水源とする「多田野水道」や、ため池から引水した「皿沼水道」、高台に井戸を掘った「山水道」で、現在まで残っているのは清水池公園の水源地だけだそうです。
敷地内には、元郡山町長の今泉久次郎(いまいずみきゅうじろう)さんの胸像が、公園を見渡せる位置に建っています。
今泉さんは明治時代、郡山市が郡山町だった頃に町長を務め、市内の水道整備に尽力しました。
その横には「水道発祥の地(多田野水道)」と書かれた説明看板があり、郡山市の水道の歴史をうかがい知ることができます。
看板を読んでから池を見ると、水底になにか土管のようなものが沈んでいることに気が付きます。これは当時の水道管で、松の木の丸太をくり抜いたものだそう。
清水池から郡山市街地までのおよそ10キロの区間をこういった木管で繋ぎ、生活に潤いをもたらしていました。しかし、木管は腐食や漏水が多く、メンテナンスが大変というデメリットもあったようです。
そんな腐食が激しい木管が、昭和や平成を超え、令和の現在までその形を残していることに驚きました。水の中で黙座する様子は、そこだけ明治時代から時が止まっているようにも感じられます。
公園にも深い歴史がある!
生活に潤いをもたらした清水池は現在、「清水池公園」として市民の憩いの場となっています。公園内は緑が豊かで、春になると池の周辺には水芭蕉が咲き誇り、藤棚を鑑賞することもできます。
また、近くには白鳥が飛来するなど、四季を通じて楽しめる場所です。
駐車場はありませんが、近くには県指定天然記念物になっている奇岩の有名な「浄土松公園」があるので、散策ついでに訪れるとちょうどいい休憩ポイントになりますよ。
子どもと一緒に遊んだり、お弁当を持ってピクニックをしたり、普段何気なく利用している公園にもたくさんの歴史があるんですね。
郡山市は清水池公園のほかにも、水に関わりのある公園やモニュメント、渓谷などが数多くあります。足を運んだ際、公園の背景に目を向けるのも面白いのではないでしょうか。
逢瀬町の小さな公園は、市街地へ水を届けた明治時代の人たちの努力を、今でも感じることができる貴重な場所でした。
清水池公園
住所:〒963-0213 福島県郡山市逢瀬町多田野清水池24
交通:JR東北本線 郡山駅から車で25分